題名は思いつかないのさ

 芸の肥やしになるかと思って(いくつか必要となる理由もあって)、最近流行のラノベを読んでおこうと思って本屋さんへ。とりあえず西尾維新氏の新本格魔法少女りすかを買ってきたわけですが、こういう、漠然としたカテゴリー(ファウストに載っているような人たち? ずいぶん乱暴な括りですが)はなんと呼称するとよいのでしょうね?

 とにかく1ページ開いたその瞬間の自分の意識は、「あ、こりゃネタになるな」と思ったので日記に書くわけですが(笑)、精緻、でもない、丁寧、でもない、でもその圧倒的な量。言い換えると『情報量』。なんでしょう、マスターグレードのプラモデル買ってきて箱を開けたら『くらっ』という、例えて言うならそれに限りなく近いショックを受けたのです。そして読み始めて、それは割合に間違ってなかったのだな、と思ったり。そう、開始数ページで私の感じたのは、『完成品』つまりパッケージとしての商品は魅力的であるに違いないのに(違いないと確信したから手に取ったわけで。手に取って最初に価値を見出すのはタイトルからのイメージと表紙の絵とぺらぺらめくって見た文体の好みと作者自身のネームバリューですな)、始めは『出来上がったらパーツの下に隠れちゃうような足首の多重関節から作るんかい! せめて顔から作らせて!』というイメージだったわけですよ!(笑)

 それが悪いとか言うこっちゃなくて、ただ純粋に興味深くて、まさにこれはイニシエーションなのだよというような単語、表現の山、山、山。これは前提条件なのか? というくらいに自分のフィールドから他人様のフィールドに連れ去られる感覚。そこが狙いなのか? それとももはやそういった『フィールド』が了解事項として成立している市場(という言い方はちょっと下世話過ぎるかな。そう…言い換えればサロン? 〜派みたいな)があるということなのでしょうか。

 一般読者と『言語』で隔絶があるということならハードSFなどを引き合いに出してもいいのかも知れません*1が、考えてみればそれは不思議な話にもなりまして、ラノベつまりライトノベルは、文字通りライトなノベルなのですよ。それが何に対して軽いのかという疑問。面白くないですか? もはや、明らかに純文学と比べたって軽くないんですよこれ、比重が(笑) 水に浮きません、そういう意味での比重ですが。あえて言うとすれば、世間での評価くらいですか? 世間一般の小説と、言ってしまえば漫画、その間を繋ぐと思われていたライトノベルはどこへ行ったのでしょうか。*2

 そして、ラノベであってラノベでないという存在は、読者にまた不思議な感覚を与えるわけで。つまり、先にも言った(普通の小説より漫画アニメ寄りなものを嗜好する)読者が自分のフィールド、言語で理解可能な小説=ラノベ、という定義を逸脱した小説は、「おいおい、ルール違反じゃないのさ?」という感覚と「ちょっと待て、俺を置いて(頭のいい高次元に)いくな!」という笑えかつある意味シリアスな焦燥感を読者に与えるのではないかと言う、ですね(笑)。

 これがハードSFであったら、読者の知らない知識というのはすなわちセンス・オブ・ワンダーとなり、読者は作品から知識を与えられることを抵抗なく受け入れると思うんです。だが、ラノベからものを教わることに対する漠然とした焦燥ってあると思うんですよね(苦笑)。ラノベというのはそれを嗜好する読者の価値観を揺るがさない市場であったからこそ成立したわけで。勿論そうやって消費し続けて限界が来たというだけの話さ、とか、そういうのって飽きるじゃん、という考え方は十分に理解できますが、パラダイムシフトが起ころうとしているのであれば話は違う。読者もステップアップしなければ楽しめないのであれば、楽しむ勉強をしなければいけない時なのかも知れない。そして、私なんぞは舞台は違っても、まがりなりにも送り手のはしくれであるわけで、そういったものを要求されたときどうするのか? というのは仕事的にシリアスな問題でもあります。

 とりあえず、新たな物を見るつもりで手に取った本に真摯に向き合おう、と決めた私なのです。最近すっかり『萌え』というバロメータでしか商品価値を計れなくなっていた自分にとっては、ちょいとその色眼鏡を外してみよう、という計算でもあります。

 ちなみにこの前に読んだ小説がですね、R.O.Dの10巻っていう体たらくで。一冊476円でもさあ、これはどーよー? って思った猫舌なのでした。や、言わせてもらうとですね、暴走してんのが悪いとか、文体が適当なのが悪いとか、パクリまみれで悪いとか、そういうこっちゃないんですよ。踊るならもっと本気で踊れよ!っていうナニでして。まあすんごく時間なさそうなことが書いてありましたけどね。なら今回は忙しすぎてコピー誌なんですよ! なんて威張るこっちゃないだろ、と(笑)。

 では、『新本格魔法少女りすか』の読了後の感想は、また次に。

*1:それだけでなく、いわゆる『萌え系』も独自の文法に拠って立つのでしょうが、今回は割愛します。

*2:それを満たすものは今でもあります^^;